2016年9・11月 ベトナム「NGO-JICA研修会/交流会」

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草の根技術協力事業終了後の継続性の確保:パートナーシップ及びオーナーシップ

2015年JICAベトナム事務所NGOデスクからの要請でNGO-JICA研修/交流会での講師アドバイザーを務め「住民参加型のアプローチ」に関する講義と実習を行いました。2016年度も引き続き研修/交流会での講師を行いましたので下記報告します。

はじめに

JICA草の根技術協力事業では、必ずしも事業実施期間に日本人が駐在もしくは長期滞在しているとは限らず、プロジェクトのオーナシップをもつ日本側と業務遂行している現地側との意見の食い違いや衝突などが起きていることが想定されます。このことを念頭に、現状を知るうえで、アンケート調査ならびに聞き取り調査を行いました。9月に草の根技術協力事業実施団体の現地事業実施地を訪問し事業実態を把握することに努めました。また、JICAベトナム事務所が行う、NGO-JICA研修会/交流会では、「草の根技術協力事業終了後の持続性の確保をいかに図るか」について年度を越えたテーマとしていることから、NGO、自治体、大学等の事業の持続性をどう担保しているか確認させてもらいました。

また、①両国の実施団体が同じ目的意識をもち、それが共有できているか②普段の意思疎通と実質上の最終判断は誰が行っているか③事業終了後のイメージとそのための手立てがなされているかについてJICA担当者と意見交換しながら、研修の組み立てを考えていきました。

その中で、課題としたのは以下の2点です。

  1. 実施事業の終了時のイメージならびに終了後のストーリーを明確にすること
  2. パートナーで事業を遂行する上での問題点を洗い出し、改善点を見出すこと

研修のねらい

  1. 持続可能な事業とはどんなものか理解できる
  2. 持続可能な事業が実施できる

研修内容

  1. 参加型開発について(昨年度の振り返り)
    • 住民(事業対象者)の参加の度合い
    • 実地研修(実施者のねらいと住民の声)
  2. 持続的なプロジェクトとは?
    • 立案に関して考えておくこと
    • プロジェクト目標と成果のイメージ
  3. ステークホルダー分析とグランドデザインの描き方
  4. パートナーシップとそのコミュニケーション
  5. 事業のアウトプットと事業目的の相関関係を考える
  6. 明日からの活動につなげる

講義は、実地研修(参加NGOの事業実施地訪問)を組み合わせて行われ、かつワークショップ形式のグループワークを取り入れ、研修生が自ら考え議論する時間を取りながら、理解が進むよう配慮しました。講義も進捗を確認しながら柔軟に変化させ事例なども取り入れて進めました。

JICA側から間際にPCMやPDMについても研修で紹介して欲しいという依頼があったため、限られた時間の中で工夫して研修に入れ込むことを考えました。

また、今回は近隣で事業を実施しているNGOの事業地を訪問させていただき、実際の村人や事業実施者の口から体験談や問題の克服方法について対話形式でやり取りできたことは、参加者にとっては大変有意義であったのではないかと思います。

また、個別事業についてのアドバイスを1団体実施しました。

研修成果

本研修後に自らが実施する事業にどうフィードバックできるのかが、成果となります。ただし、終了時アンケートを見る限りではおおむね参加者は高い満足度ならびに理解度が深まったと感じているようです。一方PDMの作成やPCMの考え方について十分時間が取れなかったため、もう少しPDMの作成や事業実施中の見直し、評価を踏まえたモニタリング方法などが今後の課題となります。特に「参加のはしご」を中心とする住民主体の開発アプローチが持続的な事業実施に欠かせないこと、またパートナーシップのありようについては、参加者が自ら考え、各人思うところがあったのではないかと思います。トップダウンではないコミュニケーションの取り方や「信じて待つ」姿勢についても一定の理解が得られたものと理解しています。時間が十分ではないにしても、2日目の事業視察をベースに実際の事業のアウトプットと事業目標、またアクティビティの因果関係について実習できたことはよかったと思います。

※JICA草の根技術協力事業の詳細はこちら【JICA Webサイト】

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