2022年6月「バングラデシュ国ハオール地域における災害に強い気候変動適応型農業の実践と普及」事業開始

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実施期間

JICA草の根技術協力事業(パートナー型)として、「バングラデシュ国ハオール地域における災害に強い気候変動適応型農業の実践と普及」事業が2020年に採択され、2022年6月23日より事業を開始しました。

ハオールのようす
ハオールのようす(雨季)

プロジェクト対象地域について

事業地は、バングラデシュ北東部に広がる広大な湿地に位置しています。この地帯は「ハオール」と呼ばれ、雨季になると水没します(下図、水色で塗りつぶされた箇所)。その面積は、東京都・神奈川県・埼玉県の3県を合わせた面積よりも広く(約8,600平方キロメートル)、実際に目で見ると沼でも湖でもなく、海のような印象を受けるはずです。

ハオール地帯の地図
(参照:2013年 JICA:バングラデシュ国
ハオール地域水資源管理に係る情報収集・確認調査より)

ハオールの人々のくらし

ハオールに住む人々は、乾季には農業、雨季には漁業という形で地理的特徴を生かした生活を営んできました。

しかし近年、雨季の長期化、突発的な洪水(フラッシュフラッド)、冷害、害虫の大量発生などの気候変動起因の災害が頻発し、また土砂流入や化学肥料及び農薬の過剰使用や乱獲により魚の数が急激に減り、ハオールの人々は伝統的な暮らしを送ることができなくなってきています。

中でも、近年頻発するようになったフラッシュフラッドは稲を収穫する直前に発生することが多く、ハオール地帯の稲に壊滅的な被害をもたらす危険性があります。2017年に起きたフラッシュフラッドは、乾季に作付けされる稲を全滅させたと言っても過言ではない状況でした。

当時ハオールで生産される米は国の1/6に及び、このフラッシュフラッドによってバングラデシュ全土の米価が2~4割押し上げられるなど、この国の食料供給にも大きな影響を与えました(2017年9月30日付デイリースター紙)。

フラッシュフラッドは、上流域(インド)から大量の土砂を運んで来るため、農地に土砂が堆積することも大きな問題となっています。土砂を取り除かないと次の作付けができないだけでなく、水中に住む生物の生態系にも大きな影響をもたらしています。

農民を困窮させる自然災害に脆弱なハオールの人々ができること、それは「災害に強い農業を確立すること」だと考えます。


第一に、フラッシュフラッドが来る前に刈り取りできる稲の品種を普及することです。そして、ハオール地域で一般的となっている“乾季稲作のみの一毛作”について、ハオールの人々がそのリスクの高さを認識し、リスクを下げるために作付け転換と多品種の導入に取り組むことが重要です。

また、災害が発生しても農民の持つ知恵と能力のみで再出発をきれる環境整備が求められています。そのためには、乾季野菜の導入や稲・野菜の種を生産及び保存することなどの技術導入にとどまらず、農業関連行政が農民の状況を常に認識できる環境整備が求められています。

シェア・ザ・プラネットは、農民が素早く「災害に強い農業」を確立できるよう、次の取り組みを実施していきます。

シェア・ザ・プラネットの目指す農業

① 農業の見直し
・フラッシュフラッドが起きる前に収穫可能な稲の早生品種の導入
・乾季の野菜栽培
・有機肥料の導入と肥料や農薬の知識構築

② 種子の生産・保存環境の整備と体制の構築
・農民による種子の生産と保存
・農民が生産した種子を販売する直売所の設置と販売支援

③ バングラデシュ社会への啓もう活動
・活動パンフレットの作成と配布
・農業関連行政との情報共有や支援要請
・非対象地域向け作物展示会
(試験農場を事業地外に8つ設け、導入した稲や野菜の栽培状況や収穫結果を農場周辺の農民に知ってもらい、農業の見直しについて再考する機会を設ける)
・マスメディアを使った事業の進捗報告及び成果報告
・日本での活動発表

今後も、事業の進捗をホームページやFacebookページで更新していきます。

●JICAトピックスに取り上げられました(2022年9月1日)
トピックス記事はこちら

JICAトピックス(2022年9月1日)

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